PTSDと記憶障害
PTSDは時に深刻な記憶障害を引き起こすことがあります。これは、トラウマなどの影響によって、心の機能に、不連続が生じるような状況をいいます。精神医学上の概念としては「解離」と呼ばれ、記憶、感情、意識などの心の動きに影響を及ぼします。一見すると、これらの現象は、PTSDと結びつかないように思われますが、患者本人の深層心理では過去の体験からこれらの問題が引き起こされていることがあります。
また、記憶障害の一つである「解離」にも、実にさまざまな症状があり、それによって患者の精神面にも影響を及ぼすことが考えられます。これらは、従来はトラウマの経験とは別として研究されてきましたが、近年では、過去の経験から深刻な影響を及ぼすということが知られるようになってきました。以下に「解離」による記憶障害の例を列記します。
解離性健忘(かいりせいけんぼう)
ある一定期間の記憶が抜け落ちてしまっている状態を指します。通常の時間の経過とともに記憶が忘れ去れるものではなく、本来であれば決して忘れることのない重要な体験、もしくはそれに伴う行動の記憶などが抜け落ちてしまう状況を指します。犯罪や事故の被害に遭い、その状況から脱出するまでの記憶が抜け落ちている例などがあげられます。
解離性遁走(かいりせいとんそう)
一部の記憶ではなく、完全にある一定の記憶が抜け落ちてしまう症状をいいます。解離性同一障害(DID)と呼ばれる症状もその一つで、一人の人間の中に複数人の人格がいるような状況を指すこともあります。多重人格性障害と呼ばれることもあります。また、突然の遭難などの事故によって、まったく記憶を失い、別の地域で別人として暮らしていることなどもこの症状の一つとして考えられます。
