PTSDを理解するために
PTSDを理解するには、まず患者自身の生活環境や背景を充分に理解する必要があります。彼らは一人ひとりまったく違う人生の経験を持っており、またPDSDを引き起こすトラウマに関してもその性質も、それによって及ぼされる影響も違うということがいえます。彼らの内面性やトラウマにどう向き合い、また周囲からはどのようにサポートできるかは、どれだけ彼らを理解し、自らが力になれるかにかかっています。
トラウマが発見され、理解されるようになったのは、19世紀に入ってからであり、これは最近のことでもあります。トラウマは「種種の悲劇的な出来事が心に共通した影響を与える」ことが広く知れ渡り、またそれによって患者自身もフラッシュバックなどの影響をのちに残すことが知られています。また、トラウマ自体も発見の難しさが指摘されており、患者本人も自分の状況や症状を理解していないことがあります。トラウマ自体は、近年になってようやく、患者が受けた過去の精神的な負担として認知され、また治療の必要も認識されるようになってきました。現在も「トラウマ」と評される症状が幅ひろく、また一般的に漠然としたカテゴリでくくられているため、どこまでをトラウマと呼ぶのか、定義づけするには難しいところがあります。
PTSDを引き起こす大きな要因として、患者自身が過去に巻き込まれた「事件」があります。このような事件性に巻き込まれた患者は、事件に関連した事象などで恐怖心を持ったり、強いストレスを感じたりするようになります。一例として、地下鉄サリン事件の被害者の多くは事件直後「電車に乗ること」自体に強い恐怖心やストレスを感じるようになったと答えています。
また、被害を受けた患者にとっては、その記憶は古く過去のものにならず、まるでその現場で体感したような状況のように感じることがあります。通常の苦しみとは違う、「その場に居合わせた当人」だけが感じる恐怖や苦痛が、再び襲ってくるという過酷な状況が続くため、その体験によって、患者の精神に深刻な影響を与えることも珍しくありません。
このように、PTSDは患者の過去と密接に関連しており、被害の影響がどれだけ深刻であり、癒しがたい状況に対して、どのようなケアが出来るのか、長期的な視点が必要となります。
